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REI雑文工房内の雑記用blog。日記や散文、ゲームレビュー、掌編小説等を中心に活動中。2008.2/4設置
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3月21日は、「この青空に約束を―」のグランドエンドの日。
これ以上口を開くと、ネタバレのオンパレードとなってしまいますので自重します。記事のタイトルがちっとも自重していませんが、頑張りますっ!

午後、タイトル画面のBGMをエンドレスで聴きいていましたー。
この青空に約束を―のタイトルBGMは日にちで変わる場合があります。もちろん、特別な日には特別な曲が流れるのですが、うーん、グッと来るものがあります。
タイトル画面をキャプチャーして、BGMもバッチリ録音済みなので、いつかニコニコ動画にUPしてみたいな~なんて思っていますが、予定は未定です。ハイ。


それでは続いてこんにゃくSS~。
せっかくの3月21日なのですから、もちろんあのイベントのお話。
けれど今までどおり、一年前の物語となっておりますのであしからず。



*注意
この青空に約束を――(以下、こんにゃく)SSは基本的にネタバレおんりーです。
ゲーム本編「約束の日」を迎えてからお越しください。

One Year Ago
March 5 TUGUMI FIVE

「これで、荷物は全部か?」
 隆史さんが、荷積みの紐を手にしながら寺島先輩に尋ねた。
 寺島先輩は「そうです」と一つ頷くと、隆史さんに感謝の言葉を述べる。
「そんな気にすることないよ。ほら、君達は俺の後輩だからね。遠慮なんかしないで、どんどん頼っちゃっていいんだから」
 俺の肩をバシっと叩きながら、隆史さんはそんな調子のいいことを言う。
 ……寮までの218段を、荷物抱えてなん往復もした愛弟子のことを、もう少し労わってもいいはずだ。
「んなこと言ってっから、この俺に得物全部横取りされんだぜ? すべては競争よ、つまり戦争」
「ってことは、俺もいつか隆史さんを利用してもいいんだな?」
 肘で突きながら小声で話しかけてくる隆史さんに、俺も小声で応戦する。
 ちなみに、全部横取りなんていうのは隆史さんの出任せだから信用しないように。
 ホントだよ!?
「できるもんならやってみやがれ……っと、楠美ちゃん、お疲れ様。え、先に戻ってるって? あ、ああ。他のみんなにも宜しく言っておいてよ。あ~、あとまた島に遊びに来ることがあったら、是非サザンフィッシュに寄ってきなよ。サービスしとくからさっ」
 先に石段を上っていく先輩に、にこやかに手を振る俺と隆史さん。
「……あの子、お前に気ありそうじゃなかったか?」
「え? あ~、そりゃ~ないだろ。あの先輩は、寮の中でも会長の本性知ってる数少ない人だし、いつも会長に弄られて下僕扱いされてる俺を見てるわけだし。……ま~、そんななっさけない男に惚れるような変わり者~って可能性も無きにしも非ずだけど、寺島先輩はおとなしめの人だから、そもそも俺みたいな奴タイプじゃないだろ?」
「いいや、分からないぞ? 海己ちゃんの件があるしなぁ」
「何でそこで海己の名前が……」
「それに、ああいう物静かなタイプは、逆に不良っぽい男に憧れるもんだ。自分にはない自由奔放さやワイルドさに惹かれるわけなんだが。俺の感が鈍ってなきゃ、あの子、奈緒子ちゃんあたりに相談持ちかけてるはずだぞ? 卒業前に、星野くんに告白したいんだけど~みたいなノリで」
「いや、ないから。そんなオイシイ話ないからっ。あったとしても、会長の陰謀やらなんやらで、会長にだけオモシロイ話になるのがオチだって」
「かぁ~っ、そんなんだからお前はいつまで経ってもヒヨッコなんだ。航ぅ、てめぇ、俺の一番弟子って自覚あんのか? 俺の伝授したモテスキルを駆使すりゃあ、そこかしこ、どこを見渡しても出逢いとオイシイ話ばっかが転がってるってのに」
「隆史さんほどポジティブに生きれませんので」
「んじゃあ、あの子はどうした。3年生の節子ちゃん」
「いや、どうしたって、何もないし」
「2つも歳離れちゃ守備範囲外ってかぁ!? 女性に失礼だろっ! 女性であるなら小学生からおばあちゃんまで声掛ける気概でいけと何度言ったら」
「守備範囲外なんて誰も思ってないし、それに何度も言ってるけど小学生に手出したら犯罪だからな」
 寺島先輩が、階段の途中にある、神社へ続く分かれ道のある踊り場を超えたところで、俺達は素に戻っりながら、再びサイレント・ウォーを勃発させていた。

   §

「お~わ~ら~な~い~~っ!」
「あれ、沙衣里先生、どうしたんですか?」
「ああ、海己ちゃん、ちょうどいいトコに来たっ。今暇よねぇ?」
「あ、はい。お庭の野菜のお手入れも、ぬか床をかき混ぜるのも終わりましたから、大丈夫ですよ」
「相変わらず所帯じみてるっていうか、島の子っていうか……」
「それで、なんですか?」
「ああそうそう。あのさぁ、今日の卒寮式で、わたし祝辞言うことになってるじゃない?」
「あ、はい。確か、最初は祝辞が奈緒子さんで、答辞を節子さんがやるはずだったんですけど、沙衣里先生がやりたいって言って……」
「あの時は浅倉に対抗意識燃やして引き受けちゃったけど……。止めとくんだったわ……」
「え、どうしてですか?」
「実は……まだ祝辞の原稿ができてないのよぅ~~~~っ!」
「え、えっ、えええぇぇぇ~~~~っ!??」
「半分くらいは何とか考えたんだけど、祝辞なんて贈るの初めてだから何言っていいのか分からないし~。大学の卒業式とかで聞いてたはずなんだけど、みんなでわいのわいの会場で騒いでた思い出しか残ってないのよ~」
「ど、どうするんですか?」
「だから海己ちゃん……手伝ってちょ~だいっ!」
「……う~ん、でも、こういうのって、先生の言葉で、簡単でもいいですから『おめでとう』って言うことに意味があるんじゃないですか?」
「わたしなりの言葉……」
「そうですよ。沙衣里先生の『おめでとう』を、沙衣里先生が思ったように言えばいいと思います」
「でもわたし、新任一年のぺーぺーだし~。一年間生徒には舐められっぱなしだったし~」
「沙衣里先生、生徒の間じゃ人気ありましたよ? 気さくに話せる面白い先生だって」
「う~ん……。じゃあ、わたしなりの言葉で、もう一度祝辞を考えてみるわ」
「頑張ってください、沙衣里先生。お手伝いくらいなら、わたしもしますから」
「よ~っし、そうと決まれば~~~っ」
「沙衣里先生? 何でビールの缶を開けてるんですか?」
「え? だって、わたしらしい言葉で、わたしらしいやり方のほうがいいんでしょ? だから、酔っ払った勢いに任せて、こう、一本締めみたいに~」
「さ、沙衣里先生? それは流石に、ダメだと思います……」
「あ、やっぱり?」


   §


「せつこ~?」
 ……。
「くすみ~?」
 ……。
「あ、いた~」
 ……。
「あんね、いっしょにお風呂、はいろ~」
 ……。
「ん。さえりが準備してた。そつりょーしきのまえに、みんなではいれ~って」
 ……。
「しずね、せつことくすみと、お風呂はいんの、すき~」
 ……。
「だって、や~らかいもん」
 ……。
「うみも、や~らかいよ? くすみは、うみの次にすき~」
 ……。
「せつこは、さえりの次かな~?」
 ……。
「っ!?」
「は~な~せ~っ、しずはネコじゃないぞ~っ」
 ……。
「でも、せつこは、さえりよりや~らかくない……~~~~~っっ!!」
 ……。
「ひ~と~り~で~ぬ~げ~る~っ! う~~~っ」
 ……。
「え?」
 ……。
「せつことくすみとは、これが最後……」
 ……。
「……・」
 ……。
「んとね、しずね、いつもはくすみに洗ってもらってるから……」
 ……。
「今日は、しずが洗ったげる」
 ……。
 …。

   §

「それじゃあ、この椅子を向こうにお願いできるかしら? そう、そんな感じで」
 ……。
「うん、これで準備は終わりね。みんな、どうもありがとう。本当はこういう仕事、寮に残るあたしたちがやるはずなのに、何だか手伝わせちゃったみたいで……」
 ……。
「あら、ありがとう。お世辞でも嬉しいわ」
 ……。
 ……。
「え? 式が終わった後の予定? ……特にないけど」
 ……。
「伝えたいことがあるから式のあとで寮の裏庭に……って、ちょっと―――」
 ……。
「……あ~っ、たく、人の返事も聞きやしないで走り去ってもう……っ! 類は友を呼ぶじゃないけど、航のまわりの男の子ってみんなああなのかしら」
「……」
「マズいわね。これで卒業式に告白フラグ3本目じゃない」
「……」
「いつもみたいに軽くあしらうわけには……いかないわよねぇ。なんたって、一応寮生で、航の友達なんだから……」
「……」
「あ~っ、もうっ! いちいち出向いて断らなきゃいけないあたしの身にもなれってのっ」
「……」
「はぁ。あとで、ど~せまともな祝辞を用意できてないさえちゃんを弄って、鬱憤晴らすしかないわね」
「……」
「……さて。卒寮式の会場の準備も終わったことだし、そろそろみんなに声掛けるとしますか」

   §

 第14回、高見塚学園つぐみ寮卒寮式は、けっこうドタバタと、慌しく始まった。
 それはもう、式と呼ぶには酷いものだった。
 さえちゃんはクラスを受け持ったことのない新任教師で、寮長も初めてで、式の進行は、行き当たりばったりと言う名のアドリブにまみれたものだったし、祝辞だって、ちゃらんぽらんな、さえちゃんらしい内容だった。卒寮証書にいたっては、さえちゃんがパソコンで打ち込んだ、見栄えのしない簡素な紙だ。
 会長の「来年は卒業証書を余分に発注してちゃんとしたのを作りなさいよ」と愚痴をこぼしていたり、海己は終始苦笑いを浮かべていて、静は静で、どういった経緯からか、宮川先輩と寺島先輩の間に座り、まるで愛玩動物のようにぎゅっと抱きしめられていた。本人は迷惑そうな顔をしていたけど、逃げようとはしなかった。
 そんな卒寮式だったけど。
 寮を出て行く仲間達は、終始笑っていた。
 しんみりした空気にはならなかった。
 俺達は、俺達らしく、いつものように馬鹿騒ぎの中で、式を終えた。


 良太達が寮を出て行って、この島から出て行くことになって……胸が掻き毟られる思いをしながら、終わる式だと思っていたけど。
 最後まで、そんな、いつも通りの俺達でいられたことが、何よりも嬉しかった。

   §

 卒業生と、出水川の帰任組の卒寮式が終わり。
 卒寮生を送り出したあと、真っ先に泣き出したのは、思ったとおり海己だった。
「よしよし。よく今まで、頑張ったわね。あんたは偉い。ちゃんと、みんなを笑って送り出せたんだから」
 会長が、そんな海己の頭を抱きしめるようにしてあやしている。
「……ね~、なおこ」
「何よ、まさか、静まで泣き出すなんていうんじゃないわよね……?」
「ん。せつことくすみとは、もう、あえないの?」
「あ~……」
 会長は、少し口ごもったあと、
「宮川先輩は、明日の便で島を出るって言ってたけど、楠美のほうは予定を調整して3月一杯は島にいるんだとさ」
「……そっか」
 静は、泣かなかった。
 泣かない代わりに、俺とさえちゃんの服の裾を、ぎゅっと握り締めた。
 会長は「あ~、明日雪が降る事態だけは避けられたようねぇ」と安堵の息を吐き出した。
 けれど、俺は気付いた。
 たぶん、会長も気付いたんだろう。
 静は、知ってしまったんだ。
 親しい人と別れることは、辛いことなんだと。
 そしてそれは、いつか俺達にも訪れるんだってことを。
「それにしてもさぁ~」
 今までの空気なんてお構いなしに、さえちゃんが口を開いた。
「結局、新しい寮生は現れなかったわねぇ……」
 場の空気なんてお構いなしの発言は、思ったとおり空気の読めていない発言だった。
「それって、どういうこと、なんですか……?」
「海己。あんた……」
 会長の胸の中で、海己の顔が青ざめているのがここからでも見て取れた。
 海己にしてみれば、一緒に暮らしていた仲間との別れだけでもオーバーフローを起こしかける出来事だっていうのに、更に辛い事実を突きつけられたらきっと耐えられないだろう。
 それを分かっていて、さえちゃんは―――
 ……いいや。
 違うな。俺が過保護になりすぎているだけだ。
 さえちゃんは、別に空気が読めていないわけじゃない。
 寮生達が出て行った。
 それと同時に発生する、今日までに絶対に解決しなければならない問題だったんだ。
 みんなが寮を去った今だからこそ、しっかりと考えなきゃいけないんだ……。
「星野」
「……」
「浅倉」
「さえちゃん……」
「海己ちゃん」
「……っ、は、い……っ」
「静」
「……な~に、さえり」
 点呼を取るように、さえちゃんは俺達の名前を口にする。
「つまり、現在寮生は4人」
 溜息と共に、それの意味するところを吐き出したのは、会長だった。 
「これで、廃寮かなぁ……」
 寮生が5人以下になった時点で、つぐみ寮は廃寮となる。
 これが、学園側との取り決めだった。
「まあ、区切りがいいといえば、いいんだけど、ね」
 寮のみんなが卒寮した。 
 なら、この大きな別れのタイミングで、俺達も寮を出て行ったって、構わない。
「悔しい、な」
 俺は呟いた。
 2月の終わりから分かっていた問題だった。
 どうにかしようと、あれほど考えていて、あれだけ行動して。
 それなのに、成果を上げられなかったんだから……!
「航。あんた一人の責任じゃない。あたしだって、何もできなかったことに変わりないんだから」
「……会長」
 会長の腕の中で、海己が本泣きに変わりつつあった。
 服を掴む静の拳にも、自然と力が入っている。
 さえちゃんは、この空気の中、耐えられないといった感じに目を逸らしながら俯いていた。


 もう、どう転んでも、これで廃寮なんだ……。

 俺達はうなだれながら、言葉もなく、ただただ、風に揺れる桜のざわめきを、聞いていた……。


「……はぁっ、ふぅ~っ」

 桜の花のざわめきに紛れて、何か妙な声が聞こえた。

「お正月の時もそうでしたけど、この階段、一体、何段あるんでしょうか……?」

 どんくさそうな声だった。
 それでいて、どこかで聞いたことのある声だ。

「よいしょっと~。あと1段、2段~、3段~~~」

 ひょっこひょっこと、石段から、黒いリボンと流れるような銀色の髪が、姿を現した。

「あ、みやだ~」
 その突然の来訪者の正体に、誰よりも早く気付いたのは静だった。
「その声は……っ! 静ちゃんですね~~っ! ああっ、なんて懐かしいんでしょうかっ! 静ちゃん元気でしたか~?」
「みやも、げんきだった?」
「わたしは元気でしたよ~。あ、先輩もお元気そうで~って、どうしたんですか? みなさんお揃いで、暗~い顔をなさって……。はっ、ひょっとして、誰かのお通夜か何かですか!? あの卑怯な手で何度もわたしを大貧民に落としいれた、奈緒子先輩という方のお通夜ですかっ!?」
「ほっほ~う、あんた、久しぶりに会って最初に言うことがそれとは、いい度胸してるじゃない~~~?」
「ああっ、本人が目の前にいましたっ」
「え~っと、宮だったな。六条のじ~さんの孫っていう」
「あ、はい。それと先輩? 何度も言いましたけど、わたしは宮穂ですよ? ほら静ちゃんも間違って覚えちゃってるじゃないですか~」
「んなこたぁど~でもいい。で、今日は何の用なんだ? 遊びにきたんだったら、ちょいと日が悪いから他の日にでも……」
「ああ、そうですそうですっ。え~っとですね。この度、わたし、六条宮穂は、高見塚学園に入学することとなりましたっ」
「……そっか。まあ、おめでとさん。まあ俺の後輩としてこき使ってやるから、覚悟しとけな」
「えっと、わたしが先輩の奴隷となってこき使われる話はひとまず置いておきますけど、とりあえず挨拶ついでに遊びに来ちゃいました~っ」
「やっぱし遊びにきたんじゃね~か」
「え~え~そうですよ。もう言い訳なんてしませんよ~。さあ静ちゃん、今日こそはそこの奈緒子先輩にリベンジですよ~っ」
「今日こそはって、あんた、あたしに楯突いたのはあの日一日限りだし、なによりこのあたしに本気で勝てると思って……って、ちょっと待ちなさい。……宮、だっけ? あんた、この島に越してきたの?」
「はい。そうですよ? おじい様が使っていた、六条の家に本日付で引っ越してきました。あ、引越しそばを持ってきたほうが良かったでしょうか……?」
「……あのさぁ、宮~。あんた、このつぐみ寮に入寮する気、ない?」


 誰もが諦めかけていたその時。
 ひ~こら言いながら石段を登ってきたそのどんくさい奴は。
 この瞬間、つぐみ寮の救世主となった。



 こうして。
 俺達の物語は。
 ようやく、動き出したんだ―――。 
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日々ぼんやりと過ごしながら細々と物書きの真似事をする暇人。現在「リトルバスターズ!」の二次創作を中心に活動中。
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